2018/12/22

依存症の治療開始にはCRAFTが有効?|当事者の家族の私の処方箋

 「私の夫がアルコール依存症です。全然治療を受ける気はなくて『酒なんていつでもやめられる』って言って聞かないんです…。」

 

「私の息子がゲーム依存症で…。『病院に行こう』って言っても聞かなくて。部屋に閉じこもってしまうんです…。」

 

あなたはこうお悩みではありませんか?

 

依存症は「否認の病」とも呼ばれ、依存症当事者が治療機関につながらないケースが多くあります。この記事をお読みのあなたは依存症当事者のためにどんな援助ができるだろうとお悩みではありませんか?

 

このコラムでは依存症の家族だった私が、依存症当事者が治療の決意ができる援助方法の1つであるCRAFTという技法についてご紹介します。

 

目次

 

1. CRAFTプログラムの目的

CRAFTとは「Community Reinforcement And Family Training(コミュニティ強化法と家族トレーニング)」の略で、患者が治療を拒否している物質依存症患者の家族向けのトレーニング法として Meyers らによって開発されました。近年は引きこもり当事者への治療プログラムとしても注目されています。

 

CRAFTはアルコールや薬物などの物質使用患者が医療機関等に受診しようとしないときにまず支援者が家族に介入をすることで本人を受療につなげ、次の段階として本人に介入をおこなうという包括的プログラムです。

 

依存症当事者であるクライエントを変えようとするのではなく、クライエントの環境に介入することで、依存症当事者の気持ちや行動を変えられるように環境を調整します。この過程で依存症当事者は、「やめたいけどやめられない」という葛藤や過去の苦しみを抱えながらも、「治療を受けよう」という勇気を持ち、治療へとアクション出来るのです。

 

医療を拒否する依存症当事者に悩む家族や周囲者CRAFTのプログラムを受けることで、家族の行動が変わり、その結果依存症当事者の行動も変わり、医療機関を受診するようになるという研究報告もあります。

 

CRAFTが目指すものは以下の3つです。
(1)物質使用者本人の物質使用を減らす
(2)物質使用者を治療に参加させる
(3)本人が治療に参加するかどうかにかかわらず家族など相談者自身の幸福感を高める

 

そして、このプログラムの特徴として,依存症当事者の家族の苦痛や苦悩を和らげ,依存症当事者の治療につなげ、家族全体の福祉の向上を目指す包括的なプログラムです。依存症の家族の疲弊しがちな気持ちに共感的で寄り添うプログラムでもあります。

2. 実際のCRAFTの内容

 実際のCRAFTのプログラムでは以下のことを行います。

①依存症の家族や周囲者のモチベーションを高める
②依存症当事者の行動上の問題の機能分析をする
③家庭内暴力の予防措置の考案
④家族のためのコミュニケーションスキルを鍛える
⑤慎重な使用の正の強化
⑥物質使用行動のためのネガティブな結果の使用
⑦依存症当事者の家族などの周囲者がそれぞれの人生を豊かに生きる
⑧依存症当事者へ治療を勧める

 

ここでは、②の機能分析と④のコミュニケーションのコツについてお伝えします。
なぜなら2つはこの記事を読んだ後、あなたがアクションしやすいプログラムだと考えたためです。

 

依存症当事者の行動上の問題の機能分析をする

機能分析とは「その行動がその人にとってどのような意味をもつのか理解する」ことを言います。機能分析をすることで、依存症当事者の家族が当事者を思って行う善意の行動が無視されること、依存症当事者が口では「やめる」と言っているのにやめられないことが、依存症当事者とその家族との関係性でどのような意味を持つのか、どのような作用を及ぼすのかわかるようになります。この分析は別名ABC分析とも呼ばれます。

 

 機能分析は以下の3つに分けて考えます。
①どんな状況で起こるのか(Antecedent:弁別刺激、 Establishing operation:確立操作)①自分の問題をどのように理解しているか(ルール:確立操作と して機能する)
②どんな行動か(Behavior:ターゲット行動)
③直後(60秒以内)にどのような結果が起こっているか (Consequence:結果)

 

具体例を挙げてみます。
例えば、「息子が壁を殴って穴をあける」という行動したとしましょう。
さて、息子はどうして壁を殴ったのでしょうか?息子が壁をなぐる直前の状況を振り返ります。
すると、息子が壁を殴る前に、彼の母が「彼がゲームをやりすぎるから」という理由で無理やりゲームを取り上げていたことがわかりました。
結果として、以下のことが起きました。
・「壁に穴が開いたこと」
・「息子が壁を殴り、手をけがしてしまったこと」
・「家族内が険悪になること」

つまり以下のようになります。

このように、「どうしてこの行動が起きたのか?」等を考えることで、どうしたらこの行動が減らせるのか考えやすくなります。
これらを知ることで、依存症当事者が何を考えているのか?どう思っているのか深く考えるきっかけが生まれ、依存症当事者とよりよいコミュニケーションがとれる可能性があります。

家族のためのコミュニケーションスキルを鍛える

CRAFTのプログラムの1つに依存症当事者とよいコミュニケーションをとるスキルを鍛えるものがあります。
このプログラムを通して、コミュニケーションスキルを磨くことで、依存症当事者とコミュニケーションが上手に取れるようになり、良質な関係性を築くことにつながります。

ポジティブなコミュニケーションをとるには以下の8つのポイントがあります。
①短く
②肯定的に
③特定の行動に注意を向ける
④自分の感情の名前を明確にする
⑤部分的に責任を受け入れる
⑥思いやりのある発言をする
⑦自省を促す
⑧援助を申し出る

①短く

長いコミュニケーションは聞く手の気持ちをそぎ注意をそらしてしまいます。相手の様子を見つつ「これだけは!」と思う気持ちを短く伝えましょう。

②肯定的に

相手に対して肯定的に反応する必要があります。相手にしてほしくないことを伝えるのではなく、してほしいことをつたえることで相手が責められていると感じる気持ちを軽くすることができます。

③特定の行動に注意を向ける

ほめるときも叱るときも具体的にどの行動についていっているのか明確にすることで、言われた相手も「この行動がよくないのか」、「この行動はいいのか」と気が付くことができます。そのため、叱るときも「こんなんじゃだめだ」などと漠然としたしかり方ではなく、「ものにあたるのはよくないよ」なとど行動を明確化する必要があります。

④自分の感情の名前を明確にする

依存症当事者が問題行動や依存症の家族が傷つくような行動をしたとき、あなたがどう感じたかという気持ちを考えてください。自分のありのままの気持ちに気が付くことで、「怒りの感情を持っていたことに気が付かなくて無自覚に依存症当事者を責めてしまった」という状況を防げるかもしれません。とはいえ、依存症当事者の行動によって感じた感情をそのまま当事者に伝えることで傷つける可能性もあるため、この感情を伝えるかどうかはその場面に応じて検討する必要があります。

⑤部分的に責任を受け入れる

依存症当事者の問題行動に対して、自分にも要因がなかったか考え、部分的に認め、それを伝えます。部分的に認めることで、依存症当事者も「自分ばかり責められている」という気持ちが少し軽くなり、気持ちが楽になるかもしれません・

⑥思いやりのある発言をする

依存症当事者の問題行動に対して、共感的な姿勢をとることです。例えば、「海外旅行に行きたい」などゲーム依存症の息子が夢を話した時、家族であるあなたが「海外旅行に行ってみたいんだね。どこに行きたいとか候補はあるの?」の様に相手の発言に共感しつつ、「自分は相手に関心があるんだよ」というスタンスをとることが大事です。共感的な態度をとることで、依存症当事者が本音で話しやすくなるでしょう。

⑦自省を促す

相手に対して共感的な態度を示しながらも、相手に対して、問題行動によるデメリットを伝えていきます。例えばゲーム依存症当事者が引きこもってしまった場合、

 

「ゲームをしていると不安じゃなくなるんだよね。少し楽になるんだよね。でもでもゲーム続けてると身体によくないし、心配だよ。」

 

などと、相手の「問題行動(ここではゲームをし続けてしまうこと)」をしてしまう依存症当事者の気持ちに寄り添いながらも、相手の身が不安だ、そして問題行動をし続けることでデメリットがあることを伝えています。こうすることで、依存症当事者も相手は自分を思ってくれていること、そして問題行動をすることでのデメリットに気が付くかもしれません。

⑧援助を申し出る

依存症当事者が少しでも、問題行動によって自分はデメリットがあると気が付き、悩んでいるとき、協力的で温かい雰囲気で支援を申し出てください。相手に「どうしたいのか?」という言葉を引き出しながら、相手に寄り添いつつ「私はあなたの力になりたいから何かできることはないか?」というスタンスで言葉を引き出してください。

 

いかかだったでしょうか?

ここまでCRAFTで実際に行われているプログラムの概要を説明しました。CRAFTのコミュニケーションの仕方について弊社でも別に記事にしております。こちらも併せてご覧ください。

 

家族が依存症なら…。説得に効果的な5つの方法|CRAFTってご存知ですか?

 

3. まとめ

①CRAFTとは「Community Reinforcement And Family Training(コミュニティ強化法と家族トレーニング)」と呼ばれるプログラムで依存症当事者が治療を決意するのに効果があるプログラムです。

②CRAFTでは様々なプログラムがあり、コミュニケーションスキルを磨く、機能分析をするなどがプログラムに組み込まれています。

 

依存症当事者が否認し続けることで家族も苦しみます。しかし、CRAFTの技法を通して、少しずつ依存症当事者とうまくコミュニケーションが取れるようになり、結果的に家族も少しずつ気持ちも楽になっていくと思います。

 

とはいえ、依存症当事者、家族一人で悩む必要はありません。決して自分たちで問題を抱え込まず、まずは専門医療機関や福祉施設等にご連絡ください。

 

私たち、ヒューマンアルバでは依存症回復に向けた無料相談を行っています。私たちの施設では、依存症の当事者やその家族として依存症を体感した経験を持つスタッフが依存症当事者やご家族1人ひとりにに寄り添った対応を行なっています。

 

・CRAFTを1家族だけでこのプログラムを行うことが難しい

 

・こういうシチュエーションの時どんなコミュニケーションをとればいいのかわからない

 

どんな悩みでも大丈夫です。何かありましたらお気軽にご連絡ください。

 

お問い合わせはこちらから:https://human-alba.com/contact/

ヒューマンアルバ〒214-0038神奈川県川崎市多摩区生田6-4-7

電話でのご相談も受け付けております。

TEL: 044-385-3000 (受付時間:平日10:0018:00)

 

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ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会を開催しております。

依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。

 

・つらい思いを吐き出す場として

 

・状況を変えていく学びの場として

 

ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)

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参考:
吉田 精次 (2014)CRAFT による家族の介入方法 藍里病院
西田 美香(2017)地域におけるアルコール依存症の治療や支援の実態及び課題 アルコール依存症に関わる専門職の語りからその対策を考える 九州保健福祉大学研究紀要 18:21〜32
山本 彩(2013)発達障害特性が背景にある社会的ひきこもりへのCommunity Reinforcement and Family Training(CRAFT)適 用の可能性
アルコール依存症に対する家族の効果的な対応の仕方
境 泉洋(2013)CRAFT 引きこもりの家族支援のワークブック 若者がやる気になるために家族ができること 金剛出版
Meyers, R. J., Smith, J. E., & Lash, D. N. (2005)A Program for Engaging Treatment-Refusing Substance Abusers into Treatment: CRAFT
Nicole Nayoski1 & David C. Hodgins(2016)The Efficacy of Individual Community Reinforcement and Family Training (CRAFT) for Concerned Significant Others of Problem Gamblers
臨床行動分析と行動活性化療法
Kirby, K. C., Benishek, L. A., Kerwin, M. E., Dugosh, K. L., Carpenedo, C. M., Bresani, E., . . . Meyers, R. J. (2017). Analyzing components of Community Reinforcement and Family Training (CRAFT): Is treatment entry training sufficient?
Kimberly C. Kirby, Brian Versek, MaryLouise E. Kerwin,Kathleen Meyers, Lois A. Benishek,Elena Bresani,Yukiko Washio,Amelia Arria,and Robert J. Meyers(2015)Developing Community Reinforcement and Family Training (CRAFT) for Parents of Treatment-Resistant Adolescents

 

ライター名: 松友萌