2018/10/22

親が原因で依存症になることも|家庭環境の特徴とは?

「うちの息子はアルコール依存症なのよ、だらしないわよね。」

 

「うちの娘、常に恋人がいないと不安みたい。心配だわ。」

 

このようなフレーズ、どこかで聞き覚えがありませんか?

 

依存症の原因について考える際、多くの方はあくまで「本人の問題」として捉え、解決に動き出します。しかし、もしかするとその依存症は「親」の存在は1つの原因となり引き起こされているのかもしれません。

 

今回の記事では、「親」が原因で引き起こされる依存症についてお伝えしていきたいと思います。

 

目次

 

1. 依存症の原因

「遺伝や家庭環境など、親との関係性が依存症に繋がるの?」

今回はそうした疑問に答えるべく、まずは依存症とはどんな病気かご説明した上で、「親」という存在が依存症の原因の1つになり得るという話をしていきたいと思います。

 

依存症とは「人の精神に作用するアルコールや薬物などを使用する、もしくは興奮させるような行為(ギャンブルやゲームや買い物など)を繰り返すことで、その物質や行為がないと不快になる等の禁断症状が生じてしまう精神病理」です。

 

日常生活にも大きな支障をきたすことが多く、「やめたくてもやめられない」状態になってしまいます。個人の意思でやめることは非常に難しく、専門機関でのカウンセリングや治療の継続が回復のために必要となります。

 

実際に依存症になると、どのような状態になるのかイメージしにくいかと思います。ここではアルコール依存症を例に挙げてみましょう。

 

アルコール依存症の方の場合、仕事の憂さ晴らしにアルコールを飲んでいるうちに、次第にやめられなくなり、最終的にはアルコールを飲み続けるために会社に行けなくなる等の状況に陥ってしまうケースがあります。

 

アルコールを飲まないと、「イライラ」や「不眠」のような身体症状が生じ、自力で抜け出すことは困難です。依存症になることで、身体も精神も傷つき、社会的責任が果たせなくなる場合があります。

 

依存症になる原因にはどのようなものが考えられるのでしょうか。ここでは主な原因になり得る4点をご紹介します。

 

①周囲の影響による依存症発症

②自分の欲求の代替先としての依存

③今遺伝的なもの

④アルコールや薬物などの物質乱用

 

1周囲の影響による依存症発症

幼い頃にギャンブルやアルコールに依存している親を見て育った子どもは、大人になるとギャンブルやアルコールに依存しすくなる場合があります。また、親だけでなく、友人などの周囲の人間関係にも薬物やアルコールの乱用者がいると、彼らから影響を受けたり、誘われたりすることで薬物やアルコールを使用し依存症になる場合もあります。

 

2自分の欲求の代替先としての依存

人間は常に何かしらの欲求を持ち合わせています。その欲求が満たされれば幸福感を得ますが、満たされなければ不快感を得ます。その不快感を別のもので軽減しようとした結果、依存症を発症するといううケースもあります。例えば、職場のストレスを解消するために買い物をする、ギャンブルをするなどしているうちに買い物やギャンブルがやめられなくなり、依存症になるケースもあります。

 

 3遺伝的なもの

親がそもそも依存症である場合、子供も依存症になりやすいといわれており、原因の1つとして遺伝が関係するという見解もあるようです。例えばアルコールを乱用する、アルコール関連障害をもつ人の3人に一人の割合で親がアルコールを乱用しています。

 

4アルコールや薬物などの物質乱用

乱用をすることは依存症のリスクを高めます。「いつでもやめようと思えばやめられる。最後の一回だから」などと言いながら乱用をすることで体はその状態に慣れ、逆に乱用をしていない状態になると違和感を持ち、気づいた時には重度に依存していることがあります。

 

2. 依存症を生み出す親子関係・家庭環境の特徴とは

ここからは、依存症を生み出す特徴的な親子関係・家庭環境をまとめていきます。

 

この記事では以下の5点を詳しくお話していきます。

 

①そもそも親が依存症で子どもに悪影響を及ぼしてしまう関係

②子どもへの愛情の不足

③子どもへの無関心・放任主義

④子どもへの過干渉

⑤過度な甘やかし

 

1そもそも親が依存症で子どもに悪影響を及ぼしてしまう関係

親が依存症である場合、周囲の影響や遺伝的な要因で子どもも依存症を発症しやすくなります。他にも、親が依存症である背景には親の精神的疾患があることも考えられます。そのような状態が子どもにも精神的疾患や問題行動を引き起こしてしまい、子どもが依存症になるきっかけを作ってしまうことがあります。

 

2子どもへの愛情の不足

両親の不仲、片親、DV(家庭内暴力)、過度な多忙などにより、子どもへの愛情が欠けてしまうことがあります。すると子どもは「自分は大切な存在ではない」「自分は捨てられた存在だ」と思い込み、何かに依存をすることで寂しさや承認欲求を満たそうとします。幼い頃はぬいぐるみ、ゲームなどに依存し、大人になってからはアルコール、ギャンブル、恋愛、性行為などに対して過度に依存してしまうのがその典型です。

 

3子どもへの無関心・放任主義

こちらは愛情不足と重なる部分もありますが、子どもに対して干渉やアドバイスが著しく少ないのも依存症発症の原因の一つです。子どもが何か依存症になる可能性のある行動をとっているとき、それを監督するのも親の役目です。例えば、ゲームに過度に熱中している子どもを放置しておけばいずれゲーム依存症等になってしまう可能性を高めます。

 

4子どもへの過干渉

3とは対照的に、過度な子どもへの干渉も依存症につながる原因のひとつとして考えられています。親を意識するあまり、子どもが自分の本当の気持ちを表現できなくなってしまい、日常の楽しみが失われていきます。結果的にゲームやネットによる一時的な快感に楽しみを見出すようになり、依存症になってしまうのです。

 

5過度な甘やかし

過度な甘やかしをしてしまうことも依存症発症の原因の一つです。これは先ほど説明した「自分の欲求の代替先」としての依存に関連します。例えば、子どもが何か失敗をしたり、欲求が満たされずに不機嫌な時、親がおもちゃやゲーム、お菓子などを与えるなどです。満たされない欲求不満を別の方法で軽減する癖を覚えてしまうと、子どもは将来的に、何かに依存してしまうことがあります。

 

上記から、親子関係が子どもの依存症発症に関連していることがわかります。このように依存症の原因に親や家族関係が関連することも少なくないでしょう。「依存症になるのは本人の甘えや弱さのせいだ」と思われがちですが、決して本人だけのせいではないのです。

 

3. 依存症の克服に向けて

実際に依存状態にある方がどのようにして克服をすれば良いのか、関心のある方も多いかと思います。ここでは、依存症の当事者、また依存症患者を持つ家族に向けた対応をお伝えします。

 

【依存症当事者】

依存症当事者であるあなたは「意思が弱いから依存をやめられないのだ」、「依存症が治らないのは自分に甘いからだ」とお思いかもしれません。しかし、依存症はだれしもなりうる病気です。そして適切に第三者を頼れば克服することができるでしょう。「依存症から立ち直りたい」と願うあなたにできることを3つお伝えします。

 

本人が自覚し、治療に向けて自身で意思をもつ(認める)

依存症の方は、自分が依存症であることを隠したがる傾向があります。専門医療機関への受診を拒否することもあります。依存症を自力で治すことは非常にタフな事であり、依存症という状態自体が既に自力では治せていない状態なのです。勇気を出して治療を受ける決意をしましょう。

 

行動療法プログラムに参加する

専門の期間で相談をし、回復に向けてトレーニングをしましょう。トレーニングは個人で行うこともあれば集団の場合もあります。特に集団で行うトレーニングでは、同じ悩みを持つ人々と関わることで共に回復へと努力することが出来るかもしれません。

 

自助グループに参加する

自助グループとは、「同じ問題を抱える者同士が集まって意見を交換し、互いに援助しあう集団(大辞林第三版より引用)」です。グループに属することで一人で悩まずに、問題への取り組み方や姿勢で自己変容を促しましょう。

 

依存症を完璧に克服することは簡単ではありません。しかし、あなたが勇気を出して取り組む姿を周囲に見せるだけでも、周囲との関係改善には十分に役立ちます。

 

【家族】

さて最後に依存症になった子供に対して親や家族ができることはどんなことがあるでしょうか。以下、親に出来る重要な役割について述べます。

 

子どもの話をちゃんと聞いてみる

家族の人に自分の苦しみに関して聞いてもらい、受け止めてもらえればそれだけで当事者は癒されます。更に、子どもたちが記憶しているお話は周囲の大人が記憶しているお話とは事実が異なる場合もあります。もしくは大人たちの方が完全に忘れてしまっている可能性もあります。子どもにとっては自身の記憶がまぎれもない事実。それを受け止めてあげることが癒しにつながります。

 

子どもの過去と現在の苦しみを受け止める  

子どもたちも、彼らなりに生活に苦しみを感じています。そしてアダルトチルドレンと呼ばれる人たちは、大人になった現在でも苦しみ、悩みながら生活をしています。彼らの悩みや言い分を聞いて受け止めてあげてください。

 

「依存症の親」はアダルトチルドレンを生み、親子ともに生きづらさを抱える。

 

自由で率直な親子関係を築く

親子で自由で率直な関係を作り上げていってください。親だからといって、決して子どもよりも上だと言えるものではありません。親も完璧ではなく、多くの間違いを犯します。完璧な自分を目指す必要はありません。

                      

忍耐を持って待つ

依存症の治療を始めても、すぐには効果が現れるとは限りません。また、依存症の期間に壊れてしまった周囲との関係性も、すぐには修復できないと思われます。依存症の彼らは勇気を振り絞って治療に取り組んでいます。彼らの勇気・思いを尊重し、長い目で待っていてあげて下さい。

 

4. まとめ

この記事では、依存症者の「親」側が依存症の原因になり得る場合がある話をしていきました。

 

改めて内容を整理します。

 

  • ①依存症の発症には親子関係や家庭環境が密接に関わっています。
  • ② 依存症当事者の方は、勇気を出して自分と向き合い、治療を検討してください。
  • ③家族の方々が、依存症と戦う子どもを長い目で応援してあげてください。

 

今回は1つの可能性として「親」の存在を挙げましたが、もちろん必ずしも親の責任ではないこともあります。また、理由と言えるものが複数存在する場合もあり、ご自身を過度に責める必要はありません。

 

どうか当事者もしくは家族だけで依存症問題を抱え込まないで下さい。

 

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    参考:

    Nigel Barber "Do parents cause drug addictions in teens?"(2010.04.14) Psychology

     Today

    David Sack "5 Things Parents Do That May Encourage Teen Substance Abuse"

     (2013.05.04) HUFFPOST

    Effects of Parental Substance Abuse on Children and Families" The American Academy

     of Experts in Traumatic Stress

    Christopher Bergland "Harvard Study Pegs How Parental Substance Abuse Impacts Kids"

     (2016.07.18) Psychology Today

    Vincent C. Smith, Celeste R. Wilson, COMMITTEE ON SUBSTANCE USE AND

     PREVENTION "Families Affected by Parental Substance Use"(2016) AAP Gateway

     "The Effects of Parental Substance Abuse on Children" drugrehab.org

    村松真実 共依存の親子かも…チェック方法と対処法を看護師&心理相談員が解説(2018.11.15)

     Reme

    ララ 依存症の原因に親子関係は影響している(2018.05.23) 脱赤字!

    西橋康介 過干渉の親が生み出す子どもの依存症(2019.02.02) カウンセリングルームWILL

    Therese J. Borchard "12 Ways to Beat Addiction"(2018.07.08) PsychCentral

    アルコール依存症治療の成功のカギ アルコール依存症治療ナビ.jp

    依存症自助グループ 神奈川県立精神医療センター

    ・Golinelli D, Longshore D, Wenzel SL: Substance Use and intimate partner

     violence:Clarifying the relevance of women’s use and partners use. Journal

     of Behavioral Health Services & Research, 2008

     

    ライター名: 松友萌