2018/10/22

薬物依存症の当事者に対する家族の対応は?

「旦那が仕事のストレスから薬物を使い続けています。薬物依存症から抜け出すことはできないでしょうか?」

 

薬物依存症当事者の家族であるあなたは、どう対応すべきか悩んでいることでしょう。

 

また、「私がしっかりしていなかったから薬物依存症になってしまった」とご自分を責めているかもしれません。

このコラムでは、薬物依存症とはどんな状態を指すのか、また薬物依存症当事者とどう関わるべきか、家族の対応の仕方をお伝えします。

これをお読みの家族であるあなたが薬物依存症当事者への対応がわかり、未来に希望を持てればと願っています。

 

目次

 

1 薬物依存症とは?

 薬物依存症とは、「大麻や麻薬、シンナー等の薬物を繰り返し使いたいという欲求があり、薬物を使ってないと不快になるため使い続け、やめようと思ってもやめられない」精神疾患です。近年では、大麻や麻薬等の違法薬物だけでなく、市販の鎮痛剤や睡眠薬などを医療目的以外に使用し、薬物乱用の結果、薬物依存症になるケースも報告されています。

 

 薬物依存症当事者の年齢層も低年齢化しており、中高生の間でも薬物乱用が広がっています。薬物に手を出すきっかけは興味本位であったり、友達に誘われて、断ったら仲間外れにされそうで怖いという対人関係の葛藤などがあります。中年になると、仕事や家事・育児などのストレスの逃避として薬物依存症になるケースも報告されています。

 

 また近年、病院で処方される処方薬を多量摂取した結果薬物依存症になるケースも報告されています。

これは抑うつ気味のある青年の話です。

 「抑うつ状態でしたが、向精神薬を処方され一度飲んでみたら元気になれました。もっと元気になりたかったので複数のクリニックから向精神薬を手に入れ薬の摂取量を増やしました。次第に薬がなくてはならないようになり、薬を手に入れるために犯罪を犯してしまいました。」

クリニックの受診で、向精神薬を飲んだ結果少し気持ちが落ち着き元気になり、その気分を持続させたいという思いから薬物依存症になるというケースもあります。このようにほんの些細なきっかけが依存症の始まりとなる場合も少なからずあり、誰しもに起こりうる可能性を秘めています。

 

2.薬物依存症からの回復-回復の4つのステップ-

 

 では薬物依存症から回復するにはどうすればいいのでしょうか?

 

原則としてまず知ってほしいことは「薬物依存症は完治しない」ということです。薬物依存症の回復は、「薬物依存症になる前からの『生きづらさ』と向き合い、薬物依存症になったことで失ったものを少しずつ取り戻し、もう1度社会生活を送れるように社会復帰し、薬物と折り合いをつける」ことを言います

 

薬物依存症当事者の脳は、薬物を使い続けたことで神経細胞等が破壊され不可逆な傷を残します。その結果、些細なことで幻覚・幻聴等に悩まされる可能性があるのです。薬物依存症の回復は決して楽な道ではありません家族間で抱え込まず第三者を上手に頼ることで、着実に治療をしていきましょう

 さて、依存症の回復についてですが、薬物依存症は「身体の回復、脳の回復、心の回復、人間関係の回復」の4つのステップを乗り越え回復します。

ステップ1:身体の回復 薬物依存によって傷ついた身体の修復

 例えば覚せい剤などの興奮作用のある薬物は、心臓や筋肉を修復しすぎて筋組織等を破壊する可能性があります。そのため、薬を断つことにより体の機能が少しずつ正常に戻るように回復する期間が必要です。

 

ステップ2:脳の回復

 先ほど薬物依存によって脳は不可逆な傷を負うと話しましたが、幻覚や妄想と折り合いをつけていくことは可能です。精神科病院やクリニックと連携し、入院等することで幻覚や妄想等の禁断症状を緩和させていくこともできます。

 

ステップ3:心の回復

 薬物依存症の人は、そもそも依存症になる前から対人関係や社会生活を送るうえで苦しさを抱えている可能性があります。例えば薬物依存症になりやすい人の傾向として、完ぺき主義の性格や周りに頼れず一人でため込みやすいなどの理由でストレスを抱えやすい傾向があります。そのため、ストレスとうまく付き合い生きやすくなるために、過去の自分と向き合い、新たな趣味を見つけるなど薬のことを必要以上に考えないようにするトレーニングも必要です。また、薬物依存症になった人は「○○すべき」という考え方や、白黒はっきりしないと気が済まない性格があります。これらを心理プログラム等を通じて変えていきます。自分の考えが絶対でないと気づき、心にゆとりが生まれることで薬物依存症の当事者も少しずつ生きやすくなっていくことでしょう

 

ステップ4:人間関係の回復

 最後は他者とのつながりを取り戻すことです。薬物依存症となってしまったことで周囲から見放されるケースもあります。また、もともと生きづらさを抱え、他者と関わることが得意でない場合も少なくありません。自助グループで自分の不安や自分の願いを話し、同じように依存症に苦しむ当事者の話を聞くことで少しずつ人と関わる練習をしていきます。薬物なしで生きていけることで少しずつ周囲から信じてもらえるようになるでしょう

 

ここまでの道のりは長いですが、病院の主治医や自助グループで出会う当事者同じように依存症の家族を抱える人などたくさんの人が手を差し伸べてくれるでしょう。

 

3.薬物依存症回復に向け家族の対応

 では薬物依存症の回復に向けて家族の対応にはどんなものがあるのでしょうか?ここでは薬物依存症当事者の家族の心構えと家族がすべき3つの対応をお伝えします。

 

前提として、依存症は家族を巻き込む病気です。薬物依存症は他の依存症に比べ、違法性がある場合があり、家族が当事者にどう対応してよいか分からない、周囲に助けを求められないなどの理由で治療が遅れる傾向にあります。また、依存症は「否認の病気」と言われ、依存症本人が「自分は依存症である」と認めない傾向が強く出ます。そのため、より依存症が重症化した時点で「大変なことになった」と気が付き病院を受診するケースが多く報告されています。つらいとは思いますが、今起きている現実をあるがままに受け止める覚悟が必要です。

1 依存症を理解すること

 依存症は本人の甘えでもなく、わがままでもなく、家族のせいでもなく精神疾患です。家族や一人で抱え込んで治る病気ではありません。まずは依存症について勉強し、どんな機関を頼ればいいのか、どんな病気なのかなどを知ることが大事です。依存症について知ることで依存症当事者にどう対応すれば良いのか、少しずつイメージが湧くことでしょう。

(弊社でも依存症のコラムを執筆しています。よければ参考にしてください。)

2依存症当事者への適切な対応方法を身につけること

 薬物依存症当事者は薬物を使用することで薬物を使う前とは別人のような態度をとることがあります。

例えば、すぐかっとなったりイライラしたり、また頑固になり今までのようにコミュニケーションが取りづらいことがあるでしょう。また、家族が「依存症の人がかわいそう」と同情したり「こうなってしまったのは私のせいなのだ」という自責の念から薬を当事者に渡したい思うかもしれません。薬物依存症になった故、会社が学校にいけない時に、言い訳をしたり、薬を飲んで倒れた時に看病したりなどして依存症当事者に対応したくなるかもしれません。しかし、これは共依存という状態で、薬物依存症当事者が薬をやめるきっかけを奪ってしまっています。薬物依存症の当事者を思うからこそ、「私はあなたの体が心配です、私はあなたの将来が心配です」「あなたはきっと薬物依存から回復できるし私はあなたに治療する決心をしてほしいですと相手に伝え、薬を渡さないという毅然とした対応をするようにしましょう。

3 家族が元気でいること

 薬物依存症回復の道のりは険しくとても時間がかかります。そんな時に、依存症当事者にとって「一人にならないこと」は、依存症から回復するときの大きな支えになります。依存症当事者が立ち直りの時、家族彼らの「心の支え」としてそばにいることだけでも当事者にとって希望となります。また、依存症当事者の家族は当事者への対応に疲弊し、自責や罪悪感や無力感などで疲れをためがちです。しかし、依存症当事者の対応に疲弊し、家族が倒れてしまっては元も子もありません。そのため、基本的に睡眠をしっかりとること、栄養の偏りなくご飯を食べることだけでなく、趣味の時間を持つなど、一人で悩まず誰かに相談するなどを通してあなたが元気でいることが大切です。

 

4.認知行動療法プログラムに参加しよう

 最後に、薬物依存症当事者の意思を尊重しながら、認知行動療法のプログラムに参加を促してください。薬物依存症の回復は、完治ではなく、薬物と折り合いをつける人生を生きていくことです。そのため、薬物依存症の再発防止にも努めなければなりません。

 

 近年では、認知行動療法と言って「認知のゆがみ」を解消していく心理療法が薬物依存症の治療に効果的だといわれています。認知のゆがみとは、例えば当事者が「薬物依存症は自分の意志でやめられる。もう明日からしない」と考えます。しかし、そう考えていながらも、薬物依存症が重症の方は自分一人の意思でやめることは難しいです。これらの、事実とは異なる認識のずれに気づき、認識を修正していく過程を認知行動療法と呼びます。

 

 これらはクリニック等で精神科医や臨床心理士と1対1で行う場合を集団精神療法と呼び、多くの薬物依存症等の依存症当事者とともにプログラムに参加することで体験できます。依存症当事者が少しでも興味を持っているようであれば、誘ってみるのも良いでしょう。

 

5まとめ:薬物依存症の家族のあなたも当事者も元気でいてください。

  • 1 薬物依存症とは特定の薬物を使い続け、やめたいけどやめられない状態のことを言います。

  • 2 薬物依存症は完治できる病気ではありませんが、薬物依存症と向き合い回復することはできます。

  • 3 身体、脳、心のケアをしつつ、最終的に人に受け入れられ、社会で居場所が見つけられるように治療に取り組んでください。

  • 4  薬物依存症当事者の家族のあなたは、依存症について学び、家族への対応を身に着けてください。そして一人で悩みすぎず、あなたはあなたらしく元気でいてください。

 

薬物依存症は心の病気です。

そして、薬物依存症の家族も当事者も決して悪くなく、依存症は一人で抱え込む必要はありません。

適切に第三者に頼って、着実に治療を進めてください。

依存症専門病院、地域の保健所、精神保健福祉センターなどがあなたの力になってくれるでしょう

 

また、私たち、ヒューマンアルバでは依存症回復に向けた無料相談を行っています。

そこでは、依存症の当事者やその家族として依存症を体感した経験を持つスタッフが薬物依存症の方やご家族一人一人に寄り添った対応を行なっています。

  • ・依存症の家族にどんな対応をすればいいのでしょうか?
  • ・不安、怖い。誰か助けてほしいです。

どんな小さなお悩みも、あなたの意見を尊重しながら、回復に向けて共に歩んでいきます。

お気軽にご相談ください。

 

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参考:

第 1 章 薬物依存症を理解しましょう

https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/other/dl/yakubutu_kazoku_02.pdf

竹元隆洋.アルコール依存症の精神療法.日本アルコール精神医学雑誌 2000;7(1):53-61 

https://ci.nii.ac.jp/naid/50001411033

 

ライター:松友萌