株式会社ヒューマンアルバ

依存症コラムアルコール依存に悩む家族が、できることは?②

STEP2.家族が安全な状態を確保する

暴力を受けている?

前回では、依存症を抱えたご本人が置かれている状況を整理してみました。 今回は、ご家族自身に焦点を当ててみます。

 

依存症者のいる環境では、しばしば「暴力」をご家族が受けるケースが有ります。 そして、ご本人のことを思うがゆえに、「自分は暴力を受けている」ことをご家族が認識されず、自分の中で溜め込み続けて知らず知らずの間に苦しんでいる、という連鎖が起こっています。

 

依存症からの回復を考える上で最初に大事になるのは、「ご家族が幸せであること」です。そのために、このステップでは、ご家族がどのように安全を確保するか、考えてみます。 安全を確保するためには、今起きている現象が「暴力」であるかどうかを正確に判定することが大事です。 ※当たり前のことと思われるかもしれませんが、意外と難しいので、ぜひご覧ください。

 

以下の例のうち、「これは暴力にあたるかどうか」、考えてみてください。

 

1.親戚との食事会で、夫がお酒によって無礼な態度を先方にとった。帰宅後、妻が夫に問いただそうとすると、夫は妻をぐいっと押しのけて外に出ていってしまった。

 

2.夫が約束の時間に帰ってこなかったため、「なんでいつも約束を守らないの?」と妻が夫に問い詰めたら、「約束約束、お前はうるさいんだよ!黙ってろ!!」と酒瓶をテーブルに叩きつけ、怒鳴った

 

3.息子の様子がおかしいので、「また変なクスリ使っているんじゃないでしょうね」と母が声をかけたら、「使ってねーよ!いつもうるさいんだよ!」と扉を激しい音がなるほど強く閉め、二階の自室に戻っていった

 

いかがでしょうか? 「別に殴られたわけでもないし、暴力ではないのでは?」と思われる方も多いと思いますが、これらはすべて暴力に当たります。

 

暴力とは、単に殴ったり蹴ったりするだけのものではなく、強い言葉や態度で怒りを激しくぶつけることは、すべて暴力にあたります。

※ここでは、暴力とは、「自分が気にいらない状況に置かれた際に、相手を支配/コントロールするために活用する、誤った力の行使」と定義しています。

「実は自分が暴力をうけていたなんて思わなかった」と気づかれるご家族も少なくありません。 皆、知らず知らず、長い間暴力の被害に合い、辛い思いをしてきたことを自覚していないのです。

 

そして更に辛いことに、長い間暴力にさらされてきたご家族の多くが、「そんな風になるように育てた(接してきた)あなたが悪い」「怒らせるあなたが悪い」と周囲から言われてしまいます。

そんな状況ですので、「やっぱり、私が悪いんだ。」と更に自分を追い込んでしまうのです。 しかし、決してご自身は悪くありません。 暴力は、100%本人の問題であり、本人の責任です。被害者側に責任はありません。

 

被害者側に責任はありませんが、暴力を受けない状況をつくらなければいけません。 そのためにはどうすれば良いのでしょうか?

 

 

暴力を受けないために ①安全対策

暴力を受ける危険を感じた際に取れる行動を、事前に準備しておきましょう。

 

1.避難準備 身に危険が迫った時に、避難できる準備(持ち物・避難先)をしておきます。 事前に必要なものをリストアップし、用意しておきましょう。 (現金、身分証明書、通帳・キャッシュカード、最低限の身の回り品、等)

いざという時に避難させてくれるよう、身内や友人の方に頼んでおきましょう。

 

2.相談機関を把握しておく 地元でDVについて相談できる場所を調べておきましょう。

・女性センター

・精神保健福祉センター

・民間相談機関、女性・母子のためのシェルター

etc..

 

上記の準備をしていても、いざ暴力から逃れられない場合は、110番をしましょう。 ※勇気がいりますが、思い切ってください!

 

 

暴力を受けないために ②暴力サインを把握する

暴力には、多くの場合、先行するサインが本人から発せられています。 これに気づかずにいると、暴力を受けてしまう可能性が高くなります。 以下の事例を元に、考えていきましょう。

 

[暴力ケース]

息子が3日ぶりに家に帰ってきた(母への連絡はなし)

 

[経緯]

・「連絡もなしに、どこに行っていたの!」と母が息子に問い詰めた

・「友達の家に泊まってたんだよ」と夫は回答

・「友達って誰よ?」「また、変な仲間とつるんでいるんじゃないでしょうね?」「まさか、クスリは使ってないわよね?」と、母は心配して、畳み掛けるように、息子を問い詰め続ける

・「疲れてんだよ。あとにしてくれよ。」と、息子も罪悪感から、ここまでは冷静に回答(口調はまだ穏やかだが、母親をにらみつける)

・しかし、母親がここでも止まらず、「もういい加減にして、母さんがどれだけ心配していると思って...」と息子への問い詰めを継続

・息子は我慢ならず、「てめぇ、うるせーんだよ!!」と母親を強く突き飛ばし、自室に戻る

 

いかがでしょう?サインはみつけられたでしょうか? このケースでは、息子さんのサインは、「母親をにらみつける」だと考えられます。 また、よくあるサインとしては、

 

・「いい加減にしてくれ」「黙れ」など、口調が荒くなる

・声が大きくなる

・こぶしをにぎる

 

等が挙げられます。

こちらの例を参考に、最近あったご自身の例に照らし合わせ、暴力に先行するサインを考えてみましょう。

 

 

安全な対応を優先する

暴力は、振るう側に100%責任がありますが、最も大事なことをは「お前は間違っている」と相手を正そうとするのではなく、あなた自身が暴力を受けないようにすることです。 そのために、暴力に先行するサインにいち早く気づき、すみやかに安全な行動を取ることが重要です。

 

「アルコール、薬物、ギャンブルに依存している人に、正論を説くのは無意味」

※むしろ逆効果になるケースが多い。本人はやめたくてもやめられない、依存症という病気にかかっているので

 

このことに留意し、「暴力に先行するサイン」と「その際の対策」を整理しておきましょう。

以下、具体例になります。

 

①「黙れ!」と怒鳴る(サイン)  ⇒「わかった」とだまり、その場を立ち去る(対策)

②  にらみつける(サイン)  ⇒「向こうに行っているね」といって、別の部屋に入る(対策)

③「いつも同じことばかりいうな!」と言われる(サイン)  ⇒話題を変えてみる(対策)

 

普段の生活を思い出し、思いつく限り、多めに書き出してみてください。

 

 

黙っているだけでは、何も状況が変わらないのでは??

「黙れ!と言われるたびに、黙ったりその場を立ち去るだけでは、状況は何も変わらないのでは?」という質問をよく受けます。 また、「相手に黙れと言われて黙っているだけでは、こちら側のストレスが溜まる一方で、我慢ならない」というご意見も頂きます。

 

「黙れ!と言われるたびに、黙ったりその場を立ち去るだけでは、状況は何も変わらないのでは?」という質問をよく受けます。 また、「相手に黙れと言われて黙っているだけでは、こちら側のストレスが溜まる一方で、我慢ならない」というご意見も頂きます。

 

ただし、注意していただきたいのは、「相手がカッとなっている状態では、何を行っても無駄だ」ということ。

ご本人に働きかけるタイミングは、危険(暴力先行サイン)が去ってからです。

 

次回、【STEP3.本人への接し方/コミュニケーションを変える対応】にて、本人への働きかけという観点で対応を考えていきたいと思います。

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